ボイスオーバー 解説

1.5倍時代に、ナレーションは価値をキープできるのか?

ひろ
ひろ
こんにちわ、ひろです。

専業でボイスオーバーアーティストを生業にしています。

まずボイスオーバーってなに?という人はこちら。

要するに、「声優・ナレーションをはじめとする宅録で行う声のお仕事全般」を指します。

専業1年目にしてボイスオーバーで月収100万円を達成した経験を元に、

声を仕事にしてみたい、副業を作りたいという人、

TV・アニメで活躍する声優やナレーターを目指しているという方へも、

有益な情報をお届けしたいと思っています。

倍速時代

近年、度々話題にあがるのが、タイパという言葉。

その中で例に上がるのが、動画の倍速視聴。

ストリーミング動画全盛の時代になり、自由に自分のタイミングで倍速視聴が可能になったことで、

1.2や1.5倍,果ては2倍くらいの早さで視聴をするというもの。

かくいう自分もせっかちなので、去年くらいに簿記の資格をとったときの講義は大体倍速で見ていましたし、

学校の授業も倍速などがあればもっと集中して聞いていられただろうなーなんて思うことも。
だし、詰まったところでは巻き戻せるし、基礎学習はさっさと動画にしちまえよと心から思います。

情報だけではなくコンテンツも。

ただ、ドラマやアニメなども倍速で見るというのを聞いて、少々驚愕しました。

まぁおそらく話題だけど強い興味があるわけでは無いものなど、選別してみているんじゃないかなぁとか思ったりしますし、

たくさん倍速でチェックして、その中で感銘を受けたものを通常で何度もみたりするのであれば、まさにタイパの良い充実のさせかたかなぁと思います。

作り手として倍速視聴と聞いてがっくり来る俳優さんも見たりしますが、まぁ自分の作品に当たる確率が高まるということでプラスに考えてはどうでしょうね。

そこでボイスオーバーアーティストとして考えるのは、

「果たしてナレーションというものはその価値をキープし続けられるのか」ということ。

「やはり倍速消費に対しては倍速生産の時代になってくるのでは」ということです。

TVナレーションって本当に・・

当たり前のように見ていたTVのナレーションですが、

youtubeやネット番組などで、本質的なコンテンツをたくさん見て、改めてTVを見てみると思う。

TVナレーションの無駄の多いこと。

ワードショーなど、なーにをそんな当たり前の事をダラダラと時間かけて喋ってんだよ、と思ったりしますが、

その裏にあるのは、ターゲットが高齢者であることや、尺が決まっていて大きなニュースもそうそう無いからナレーションベースで盛り上げるしか無かったり、昔からの様式美、みたいな事もあるでしょう。

そりゃータイパを気にする若者はダラダラしていて、リアルタイムで倍速のないリアルTVなんてみませんわね。

しかも配信をネットで見れても、倍速は用意しないんだから、ほんと既得権って熟成しちゃうと動きが遅すぎるよなぁと思わざるをえません。

TVナレーターの行方

TVには暗澹たる思いを抱きつつ、でも複雑に絡まった背景があるわけなので、そうそうすぐにナレーションが打ち切られるわけではないでしょうが、

TV以外が本質を大事にし、簡潔にクリティカルなコンテンツが溢れている中で、いずれTVにもその流れが逆輸入してきそうです。

そうなった時にナレーションというのは、より本質的にはいらないんじゃない?となってくるのは必然なんじゃないかなぁと思います。

特に情報を伝える番組などは、倍速で早く情報を視聴している中では、

プロナレーターの繊細な間も読みのメロディーもワクワクさせる煽りもなにもあったもんじゃありません。

勝手に視聴者が脳内変換して受け取るわけです。

するとプロナレーターを、プロナレーターたる技術に対してギャラで雇うという価値はどんどん薄れてきて、予算に見合う額なら使ってあげるけど、というような流れになると、プロナレーターから割を食って、その下も出しろがなくなってきて・・と、TVナレーター界はなかなか大変な先行きを感じさせますね。

その中で大事になってくるのは、とにかくたくさん仕事をうけよう、というよりは、制作会社やスタジオなどでの蜜月な繋がり、ということになるんでしょうね。

なんとかしてあの人を使ってあげようと思わせられるかどうか。

それもまた本質的で無い気がしてとっても気持ちが悪いですけどね。

でもやっぱり縁をつなげるかどうか、それがクリエイターの生死を分ける時代は続きそうです。

倍速生産時代へ突入

一方で、

倍速消費があるのだから倍速生産が必要なのだろう。という流れもあるだろうと思っていて、

私もメインはナレーションですが、毎月youtubeアニメの制作として複数のボイスオーバーを提供しています。

私でも仕事がくるのですから、ネット上では数多のクリエーションが行われていて、毎日ネットの海に配給されているわけですから、やっぱりとにかくスピードの時代になったなぁと思うところでもあります。

そういえば専門学校時代のイラスト科講師の同僚も、時代的には本当にクオリティを保ちながらの「作成のスピード」がものすごく大事になったとおっしゃってましたね。

そんな中、仕事毎に別のスタジオに行って数本しか仕事ができず、夜は飲み会などの付き合いがマストで、眠い目を擦りながら次の台本チェック。
かたや売れていなければ練習もそこそこに事務所へお百度参り。飲み会やイベントに積極的に参加して誰でもいい仕事をなんとか振ってもらおうと時間を無駄にする。
と考えると、スタジオ声優は過酷だなぁと本当に思います。

その分なにものにも変え難い完成の喜びをみんなで共有するということもあるんでしょうけどね。
まぁ本当に色んな意味でスタジオ声優業界に立てるのは選ばれしものということでしょう。

倍速時代を前提に。

ともあれ、人間は欲深く、便利になったものを巻き戻すことはできません。

倍速という使われ方は今後も主流になってくるでしょうし、それを周りがとやかく言っても仕方ありません。

それがくる必然の中で、自分の最善の一歩はどこか。
考えて予想して柔軟に動いていきましょう。

ではでは。